(前項から続きます)
サブリース契約の甘い罠に要注意!から続きます。
サブリース契約の仕組みについては、あらかた前項目で説明しましたので、参照して下さい。
さて、話を聞くだけですと、サブリース契約の良い所ばかりが目立つ感じになると思います。
サブリース契約では、オーナーは空室のリスクからは解放されますし、管理の手間もかからなくなるのです。
これなら、オーナーにとってはメリットばかりではないか?!
そんな気がしても不思議ではありません。
ところが、このサブリース契約が大変問題になっているのです。
次の項目から詳しく説明します。
・転貸ならではの困った仕組みがある
サブリース契約の場合は、不動産会社がオーナーから不動産を借り上げる期間と補償される家賃金額が決められます。
しかし!ここからが大変重要なのですが、保証期間中に保証家賃の金額が、初期の金額のまま固定されているのではないのです!!!
ここが、何よりの問題になるのですね。
家賃保証がありますが、最初に契約したときの家賃の金額が据え置きで保証されるわけではないのです。
物件も最初は新築だったりしますので、とても高い家賃が保証されまして、安心・安全に運営がなされている…かに見えるのです。
ですが、入退去がありますと物件は当然『中古物件』扱いになってきまして、家賃はどーんと下落します。
すると、借り上げている不動産会社は「現家賃では貸し出せないので、家賃の値下げをしたい」と発言し、公然と家賃が下がってしまいます。
普通、入居者から「家賃を値下げしてくれ」と言ってきた場合、それなりの客観的な理由があり、良心的な大家さんなら値下げに応じるかも知れません。
ですが、たいていは値下げに応じず、家賃が支払えない場合は、退去になると思います。
ところが、サブリース契約で借り上げた不動産会社は堂々と、家賃を引き下げてそれを通します。
何だか、おかしいのではないか?
・借地借家法により、不動産業者が守られてしまう!
宅建業法の話を書いた際「弱い借り主は、とかく強い立場にある貸し主より手厚く保護される」と書いたと思います。
借地借家法という法律も、貸し主が強い立場であるという前提にて、借り主を保護する目的で制定されています。
そして、困ったことに、というべきか、条文内に『賃料減額請求権』が明記されているのです!
※ 賃料減額請求権とは?
土地や建物の賃貸借契約において、一方の当事者の意思表示で将来の賃料を増減できる権利のこと
つまり、この条文によりサブリース契約を結んだ不動産会社に賃料減額の権利ができてしまったことになるのです。
30年間家賃保証をする、という契約があっても同じ金額とは言えないのです。
そして、契約文に「10年間家賃は固定する」と書かれていても、借り主に不利な契約となれば無効にされる可能性さえあります。
借地借家法の本来の設立の趣旨が「立場の強い貸し主から、立場の弱い借り主を保護する」目的が、ここで悪く使われることになります。
サブリース契約について、賃料減額請求権の有効性を問う裁判もすでに行われています。
結果として,最高裁もサブリース会社からの、借地借家法に基づく賃料減額請求権が認められてしまいました(最高裁 平成15年10月21日の判決)。
結果として、家賃収入が大幅に減額された大家は投資用ローンの返済に苦慮するようになります。
結果としてローン返済ができなくなり、不動産物件を手放さざるを得ないという状況が、今現在起きているのです。
不動産を売却して、ローンが完済されるのなら、それは例外的かつ幸運な例です。
将来的に、築年数が経過し、賃貸の需要がほとんどない郊外や地方のアパートでは、売却の価格も破格の安値となるでしょう。
つまり、不動産を売却してもローンを完済しきれない可能性が高いのです。
なお、サブリース契約に関連するトラブルがあまりにも多く、国土交通省も指導に動き出し、2016年9月1日より『保証家賃の減額リスクの説明』が義務づけされました。
これにより、トラブルが減ることを願ってやみません。
ということで、サブリース契約が危険ということはご理解頂けたのではないかと思います。